中国人の謝罪
うちの子供達はテニスを習っている。以前中国人コーチが、事前の通知なしにレッスンをすっぽっかしたことがある。コーチが来ないので電話したところ、コーチは「試合のため、レッスンがあることを忘れました。ごめんなさい。」と一度だけ謝り、それから無料レッスンの申し出があった。私はコーチの態度に納得し、それ以来コーチを信頼している。というのは、コーチは得られるべき収入を断ってまで、つまり自らも痛みを伴いながら、詫びているからである。とても真剣な詫びである。このケースのように、中国では誠実でプライドが高い人が自らのミスを認める場合、謝罪の意を自ら行動で示してくれる。例えば中国の一定レベル以上のレストランで食事をし、「注文した料理が出てくるのが極端に遅い」など、責任の所在が明らかにレストランにあるミスが発生した場合には、レストラン経理の判断で「お詫びのしるし」と言いながら、果物などが無料でプレゼントされることが多い。ミスを行動で詫びているのである。言葉を尽くして謝られても、心から詫びているのかどうかは分からないが、行動が伴うと、お客の側としては納得できるものだ。この背景には、中国企業の激烈ともいえる市場競争がある。また問題発生に際しては、クレームが発生することが多く、新聞などに投稿される事すらあるという、中国の消費者意識の高さがある。クレームは即従業員の給与に反映されるし、新聞で書きたてられた場合は企業の経営に影響を与える。こういった中国流の一流の謝罪になれてしまった私としては、日本やヨーロッパの言葉を尽くしただけの謝罪を、残念ながら物足りなく思ってしまうことがある。最後に念のために付け加えておくが、中国人が行動で謝罪を表現するのは、そのミスが、本人の定められた責任範囲で本人の原因により発生し、また本人の責任であることが誰の目にも明らかで、決して責任逃れができない場合のみである。(2006/08/08 第1728号「国際貿易」)
⇒編集部によりますと、コラム数自体が増えたため、当方コラムの次回掲載は11月になるそうです。
